両側から集まった注文が中央の一点で結びつくイメージ図

株価はどうやって決まる?注文が結びつく仕組みと変動要因を失敗談から解説

「株価って、だれがどうやって決めているんですか」。証券会社の営業をしていたころから今まで、僕がいちばん多く受けてきた質問です。

一行で答えると、株価は買いたい人と売りたい人のバランスで決まります。ただ僕は、この一行を言えるのに、肝心なところを分かっていませんでした。

僕が2020年3月にやってしまったこと

2020年3月、僕は持っていた株を狼狽売りしました。狼狽売りとは、値下がりに驚いて慌てて売ってしまうことです。結果はほぼ底値でした。

あのとき頭にあったのは「株価が下がっている」という事実だけです。画面の数字を見て、自分も売る側に回りました。今から見れば、僕は株価を押し下げる売り手の一人でした。当時はその自覚がありませんでした。

学んだのは、株価は外から降ってくる数字ではなく、自分の注文も含んだ集計結果だということです。

株価は、どこで決まっているの?

ざっくり言うと、株価は証券取引所に集まった注文どうしが結びついた値段です。1株あたりの金額なので、会社の価値を発行済みの株数で割ったもの、という見方もできます。松井証券の株価の決まり方の説明では「株価=企業価値÷発行済み株式数」と紹介されています。企業価値を100億円、発行済み株式数を1,000万株と置けば、1株あたりは1,000円です。

ただ、実際の値段がこの計算どおりに並ぶことはありません。企業価値をいくらと見るかは人によって違い、その差が買い注文と売り注文として出てきます。残るのは需給、つまり買いたい量と売りたい量のバランスです。

注文は、どんな順番で結びつくの?

値段の決め方は、時間帯で2種類に分かれます。au カブコム証券の取引ルールの説明では、寄り付きや引けで使う「板寄せ方式」と、取引時間中の「ザラバ方式」として整理されています。

一つのゲートの前に並ぶ注文の行列を表したイメージ図

板寄せ方式は、売り注文と買い注文を突き合わせ、取引できる数量が最大になる一つの値段を選びます。その時刻に約定する人は、全員が同じ値段です。

ザラバ方式は、注文が入るたびに順に結びついていきます。優先は二つです。買いは高い指値から、売りは安い指値から先に扱う「価格優先の原則」。同じ値段なら先に出された注文が先になる「時間優先の原則」です。

ザラバ方式で買い注文が並ぶ順番(架空の例)
注文 指値 出した時刻 優先順
A 1,010円 10時00分 1番目
B 1,000円 9時50分 2番目
C 1,000円 10時05分 3番目

ここに1,000円の売り注文が来ると、結びつくのはAからです。BとCは同じ値段なので、先に並んだBが前に立ちます。僕が2020年に出した売り注文も、こうした行列のどこかに入っていたわけです。

なお、画面の株価が今この瞬間の行列を映しているとは限りません。表示の時間差については株価が15分遅れになる仕組みの記事で整理しています。

買いたい気持ちは、何で変わるの?

では、その行列の長さは何で変わるのでしょうか。野村アセットマネジメントの株価の決まり方の解説では、企業業績、金利、為替、投資家心理、政治情勢や自然災害などが変動要因に挙げられています。

  • 企業業績:影響の大きい要因とされます。今の業績だけでなく、将来の収益への期待も織り込まれます。
  • 金利:市場金利が上がると株価には下押し圧力がかかりやすく、下がるとプラスに働きやすい傾向があるとされます。
  • 為替:円安は輸出企業の業績を押し上げる一方、輸入企業にはコスト増になります。向きで効き方が変わるので、円高と円安の意味を整理した記事を先に押さえると読みやすくなります。
  • 投資家心理、政治情勢、自然災害:企業業績以外の材料でも注文が偏ることがあります。2020年3月の僕の売り注文も、ここに入ります。

好決算なのに株価が下がるのは、なぜ?

業績がよければ株価が上がる、と覚えると説明できない動きがあります。野村證券の村山誠氏は2026年5月21日公開の解説記事で、エヌビディアが2026年2〜4月期決算で売上高と調整後EPSの両方で市場予想を上回ったのに、時間外取引で株価が下落し前日比マイナスで取引を終えたと伝えています。

ここが僕のつまずきでした。株価は業績の良し悪しの評価そのものではなく、注文が結びついた結果です。好決算の発表後でも、売り注文が買い注文を上回れば株価は下がり得ます。

見通しの数字は、どう受け止める?

先の見通しも同じ構造で読めます。野村證券の池田雄之輔氏は2026年4月14日公開のインタビューで、中東情勢の不透明感が続くなかでも2026年12月末の日経平均株価の見通しを60,000円で維持すると述べ、根拠に米国の悲惨指数、ISM景況感指数、クレジット市場の3点を楽観シグナルとして挙げています。

僕が見たいのは60,000円という数字より、その下にある3つの根拠です。根拠が変われば見通しも変わります。数字だけを覚えると、2020年の僕のように、下がった瞬間に理由ごと手放すことになりかねません。

あなたなら、どこを見ますか?

仕組みを分けると、見る場所は三つに整理できます。

  1. 今ついている値段を見る。だれかの買い注文とだれかの売り注文が結びついた結果で、唯一の正解ではないと押さえておく。
  2. 動いた理由を一つ探す。業績か、金利か、為替か、それ以外の空気か。当たらなくても、分類した記録が残ります。
  3. 自分の注文を数える。自分も需給の一部です。僕の狼狽売りは、この視点が抜けていました。

次に覚えておきたい言葉を一つだけ予告します。「PER(株価収益率)」です。用語を並べる順に迷ったら、基礎知識を学ぶ順番を整理した記事に戻ってみてください。次はこのPERから整理していきます。

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